第３号　国語　2003.10.28

国語を教えていて思うこと

　国語の長文には難しい言葉や表現がたくさん出てきます。ですから、文章を理解するために漢字や言葉の意味を習っていくわけですが、いくら知識が増えてもそれだけでは文章を理解することはできません。
　どんなに難しい言葉や表現で書いてあっても、それは自分と同じ人間が考えたり感じたりしたことを書いているのであって、似たようなことが自分の周りにもたくさんある、ということがわからなければ、本当にその文章を理解したことにはなりません。
　国語の勉強とは文章に書かれていることと、自分自身の世界とをつなげる練習をすることでもあります。これができるようになれば国語に限らず勉強はおもしろいものになるし、逆にできなければ、文章を読むことは苦痛でしかなくなるでしょう。ですから国語の授業では難しい文章であっても、生徒の身近なことや、知っていることとなるべく結びつけて興味をひくということをやっているのですが、正直、非常に困っています。今の子供達は、自分が興味を持っているある特定のこと、例えばゲームとかファッションとかにしか反応しない。今、社会でどんなことが起きているのか、ということに興味も薄いし、人はどう生きていくべきなのかとか、こういうことはいいことなのか悪いことなのか、という哲学的な話を深めていくとっかかりも見出しにくい。物事を深く考えていくことをシャットアウトしてしまうような感じです。
　毎日の生活の中で目に見える出来事は氷山の一角であって、海面下には信じられない程の豊富なものがあるということに目を向けられなければ人生は薄っぺらでつまらないものになってしまいます。
　今の子供達の状態は国語の授業を受けて、知識が増えて点数が上がったからOK、というようなものではなく、物事を深く考える力を日常的に養っていくようにしなければ、改善が望めないような感じです。子供の世界で起きていることはいじめにしろ何にしろ、決して子供特有のものではなく、大人社会のマネであるわけですから、まずは私達大人がただ刺激だけを追い求め、物事を深く考えたり、感じたりする力をなくし始めていることを省みる必要があるかもしれません。その上で毎日の生活の中でどんなうれしいことやいやなことがあって、どんな事件にショックを受けて、どう考えて、どう対処したのかなど、感じたり、考えたりしたことを自信を持って子供達に話してやっていただきたいと思います。難しくても、大人の言葉で。

〔白石〕