第２１号　2007.1.25

考える人，感じる人，学ぶ人　── 鳥インフルエンザ騒動に思う

　不思議です。メディアの反応も人々の沈黙も。まだ生きていて感染しているかどうかも分からぬ鶏までも容器に詰め込まれ，窒息させられるか，超高温で焼却され殺処分されたのです。県民や国民も要するに人に感染するかも知れないので鶏舎の周囲を消毒剤や石灰で覆った上に，尊い人命というのを守るために，まだ生きている鶏まで皆殺しにしたのです。しかも，今回の騒ぎだけでなく，これまでにも何度かまったく同じことをしてきたのです。これからもそうするのでしょうか。
　猫なら，故あって悩んだ末にやむを得ず数匹の子猫を殺した人（昔で言う間引き）に対し感情的な非難を浴びせるのに，この落差は一体どこらか来るのでしょう。牛なら，鶏なら殺しても何の痛みもなく，猫や犬なら過剰に反応するこの決定的な差異はどういう根拠に基づいてのことなのか，ちゃんと説明できますか。
　人も動物です。従って，他の命を食べなければ生きて行けません。それは百も承知です。でも鶏だって少なくとも呼吸をし，心臓を持ち，血液が体中を回っている生き物ですよ。
　せめて，言って欲しいですね。「やむを得ないとはいえ，生きている鶏まで皆殺しにするのはあわれだし，ヒトの業は深い。」などと。その上，飼育の仕方が哀れです。肉も卵もヒトの口に入れるために育てているとはいえ，狭い空間にギューギュー詰め，空も見えねば，自然の風すら届かない。まるで効率第一の工場のよう。ひたすら濃厚なエサを与えられ，ついでにクスリも与えられ，トラブルが生じたら殺処分。── そう「処分」という言葉です。これを使うメディア関係者は，「バチが当たる」のではないか，くらいに恐れは湧いては来ないですかね。── イタダキマス ── という言葉もやがては死語となるのでしょうか。なぜなら，その心が無いのに何百年も続くはずがないから。
　世の中の趨勢に流される誰の人々。それを烏合の衆と言うのです。我々は，いつからこんなにも「考えず」「思いやらず」「感謝しない」日常を送るようになったのでしょうか。一人で世の中の趨勢に逆らうなんてムリだから何もしない，何も言わないでよいのでしょうか。もちろん，考えねばならぬのは哀れな種鶏のことばかりではありません。だらけです。一生では足りないぐらい余りに夥しくそこら中に転がっています。いったい何から手をつけてよいやら。── 　さて，どうすれば・・・・。